ブログを見続ける人の話

11/14
前へ
/23ページ
次へ
 駐車場の真ん中のカボチャ、草むらに隠れたお地蔵さんもどきや、降り始めた雨が乾いた地面を点描の様に埋めていく様、ビルとビルを渡すように掛かった虹、公園の時計台の上空に燦々と輝く太陽…いくつもその人の見てきた光景が広がっていた。時々おどけたり、気取ってみたり、考えさせるような文章だったり。その一つ一つが面白くて、読むのに手間取ってしまう。何日も、何日もかけて、ようやく辿り着いた最初のページ。明らかに異なる雰囲気に僕は思わず座り直して、その写真を見た。  朝焼けの空。夕焼けとは違う、黄色懸かった橙をぶちまけた空がグラデーションに彩られ、その下にはシルエットになったビル群が植物のように生え、その合間から今まさに太陽が現れる瞬間だ。 「初めまして。本日ブログを立ち上げた新参者です。  この写真は、私の部屋から撮った写真です。とても美しい写真が撮れたので、誰かの目に留まる場所で保存したくて、ブログを立ち上げました。  私がこの光景と出会った時、前日の深夜からずっと悩んでおりました。悩む、というか解決策など存在しない事でして…実は、私は不治の病を抱えています。治る事はなく、いつ死ぬか分からない状況です。それを病院から聞かされた時、世の中はひどく無価値で、生きている意味など全くないと絶望していました。私には家族も無く、友達もいません。ただ一人で死ぬ事だけが決まっていて、ひどく恐ろしく感じていました。  夜も眠れずその事をずっと考え続けていたら、いつの間にやら朝になっていて…明るくなってきたので外を見てみたらこんな景色が目の前に広がっていました。悩みなどどこかへ吹っ飛んで、私は何も考えず写真を撮っていました。世の中に絶望していた私が、です。     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加