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朝焼けの空。夕焼けとは違う、黄色懸かった橙をぶちまけた空がグラデーションに彩られ、その下にはシルエットになったビル群が植物のように生え、その合間から今まさに太陽が現れる瞬間。
ビルは太陽の強い光によって濃い影になって、輪郭だけをはっきり残している。明るいのは太陽と空、それと遠くの山々だけである。
見た事もない、幻想的な世界だった。
…知らなかった。私の部屋から見る朝焼けは、こんなに美しい物だったのか…
ふと我に返り、部屋中に居座るガラクタ共を掘り始める。
…そうだ、確か、どこかにあったはず…!
ガタガタとしばらく乱暴な発掘をすると、目的の物が出てきた。それは…カメラだった。
…フィルムは…後一枚!レンズも…黴びてない!
窓をガラッと開け、すかさず構える!太陽はじりじりと昇り始めている!
…もうちょっと待て…今撮ってやる…!
パシャリ。
乾いた音がして、大きな溜息と共に私の全身から力が抜ける。
久々にカメラなど持った。それに加えて急ぎ仕事だったので、上手く撮れている自信など無い。ただ、満足感はあった。
…きっと上手く撮れている。大丈夫だ。
太陽は、凄まじい勢いで上昇を始めた。
日が昇り、私はガラクタまみれの部屋から這い出て、現像に走る。すぐに確認したくて仕方なかった。
現像の依頼を終え、その待ち時間、私はずっと考えていた。
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