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日々しょうもない写真と何の事はない僅かな文章を眺める。その人の切り取る世界はまるで異世界で、僕の住んでいる所とは違う感覚に陥る。でも時折写真に混じる僕の日常を見るにつけ、世界が違うのではなく、世界の切り取り方が違うだけなんだと気づかされる。その驚きが、僕の心を更に釘付けにしていく。
「どうしてこんな撮り方を思いつくんだろう!?」
「こんなの、誰も見ないって!」
「なるほどぉ…そんな見方もできるのか…!」
僕はお陰で、すっかり街を歩くのが楽しくなってしまった。その人なら僕の見える景色をどう切り取るだろうか?どんな物に出会えるだろうか?思わずウキウキしてしまう。
もっと綺麗に写真を見たい、と、パソコンのディスプレイを良い奴に買い換えた。部屋も綺麗にした。服装も…どことなく小綺麗になった。
いつからか、僕はその人自身がどんな人間なのか、考えるようになっていった。
「この人は街を歩く時、どんな顔をしてるんだろう?」
「声はどんな感じかな?きっと優しい声をしているんだろう。」
「男性だろうか?女性だろうか?多分…女性なんだろうなぁ。根拠は無いけれど。」
「年は幾つくらいなんだろうか?きっと僕よりは上だ。」
頭の中で少しずつ出来上がる偶像。何の根拠も無くそこに生まれた姿だが、その偶像はその人の言葉を僕に語りかけ続けた。
どれくらいそれが続いたか、忘れた。ただ、唐突だったのは覚えている。
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