アルバムの中に隠された笑顔

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アルバムの中に隠された笑顔

***  彼女は、襟足が首にかかるくらいのショートの髪で、尖った顎にキリリと整った容貌をしていた。スラリと華奢な身体に、ほぼ毎日屋外で活動するソフトボール部らしく、肌は健康的な小麦色に焼けていた。  その容姿から一見男子生徒に見間違われることも少なくなく、さらに性格と言動が多少男っぽい一面があったため、周りの同級生たちは男子友達のノリで接する者が多かった。  そんな彼女には同じ学年に弟がいて、そちらは対照的に肌が白く、背も低く、全体的に細い線の一見女子のような容姿をしていた。決して仲が悪いというわけではなかったと思うが、なぜか彼女たち姉弟は学校ではあまり話したり一緒にいたりすることはなかった。  そして彼女は、写真に写ることが苦手のようだった。  宿泊学習や修学旅行の際には、同行しているプロのカメラマンの近くには寄らず、生徒が各自持ち込んだカメラからもできる限り逃げているように見えた。彼女自身がカメラを使っている所も見たことがない。  今は実家に眠っている中学の卒業アルバムを見返すと、かろうじて学年全体、クラス全体、部活動全体写真には写っているが、その他は端の方にちらりと写っているものばかりで、彼女自身に焦点が当たっているものは見当たらなかった。  この事実に、彼女のことが密かに気になっていた自分は、写真を撮っていたカメラマンは一体何をしていたんだ、と憤る気持ちがあったが、それ以上に写真を避け続けた彼女の執念がすごいと感じていた。    しかし、一度だけ彼女の笑顔を写真に収めることに成功した。――もちろんこれは彼女も知らない、隠し撮りである。  その写真は、誰にも内緒にしたまま、他の写真に紛れこませて卒業アルバムの間に挟んでおいた。
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