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「この子との会話で、中でも一番印象に残ってるのがあって」
「どんな?」
「オレ、一度訊いたことがあるんだよ。どうして他の女子と一緒に写真に写らないの? って」
あれは校外学習の時だっただろうか。何でもかんでも写真を撮りたがる女子を呆れたように見ていたら、彼女だけが相変わらず写真に興味を示さないで、課題プリントに集中しているふりをしているのに気付いた。
――皆と一緒に写真写らないの?
思わずさりげなく近付いて声をかけると、彼女は驚いたように顔を上げ、同じくらいの目線を合わせて困ったように笑った。
――あたし、女子っぽくないから、いつもかわいらしくしてる皆の中に入るの気後れしちゃって。いつの間にかそれが当たり前になって、写真が苦手になっちゃったんだ。
少し泣きそうな、どうしようもないような表情が胸に焼き付いた。
一方で、自分が女子らしくないから周りの女子の中に混ざる勇気がないと言う彼女が、誰よりも女の子らしく思えた。
「結局一番気にしてたのは本人だったのかなあって思ったんだ。オレには普通に女の子だったのに」
「……そっか。佐上はあいつのことそんな風に思ってくれてたんだ」
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