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第2話
向かった先は公園だった。
手入れの行き届いた花壇や遊具が点在する広い公園で、親子連れやカップルに人気がある場所だ。
自分の意志とは無関係に連行された潤は公園の隅にあったベンチに座らされた。隣に座った男は極自然な動きで潤の肩を抱いている。これでは何処からどう見ても恋人同士だ。
「あ、あの……貴方は……」
どなたでしょう、と尋ねかけたが瞳を覗き込まれてしまい、潤は口を噤んで俯いた。何の準備も無く初対面の人と対峙するのは苦手だった。
「邪魔だ」
「え?」
突然の言葉に驚いて顔を上げた拍子、スッと眼鏡を取り上げられてしまった。視界がいっきにぼやけてしまう。返して下さい……と言い掛けた唇がヌラリとした感触を得た。男の唇が重ねられていた。
「……っ……ぁ……」
カフェテラスで交わしたキスよりもずっと長く、情熱的なキスだった。
「お前の唇……綺麗なだけじゃねぇな」
鼻先を触れ合わせたまま男が笑った。息をしようと喉を喘がせていた潤はカッと頬を赤らめて視線を逸らせた。だが逃げるのを許さないとでも言う様に男の指が顎に絡む。まるで女扱いだ。
「恥らう顔もいい。久し振りの初々しさだ。堪らねぇな」
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