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――まさか、こんな形で長年の夢が叶うなんて…。
常に濃霧に包まれている国、ミストキングダムに向かう船内。そこでユアンはその美貌…と言っても過言ではない顔に複雑な表情を浮かべた。
十数年前、ユアンはミストキングダムの隣国で生まれた。雪深い山や街がある大国。権力者や洋服を身に付けた人々が暮らしているそこはミストキングダムにかかり続けている霧が拝める雪国。裕福…とはお世辞にも言えないが温かい家庭に生まれ育ち子煩悩な両親に育てられたユアンは料理好きで好奇心旺盛な好青年。エメラルドグリーンの瞳や漆塗りのような髪の毛、美貌…と言っても過言ではない顔と中肉中背の体の持ち主でもあるユアンは料理人。独身で友人にも恵まれているユアンは権力者の家で住み込みで働いている童貞。
…相変わらず真っ白だなー。
噴水や植木、花壇がある庭。そこでユアンはミストキングダムにかかり続けている霧を眺めながらそう思った。休憩時間になる度、西洋料理人が着る白衣の上にコートを羽織り職場がある洋館の庭に出ミストキングダムにかかっている霧を観るユアンの夢はミストキングダムに行く事。
国交が厳しく制限されていて貿易はしているが、ごく一部の限られた人しか行けない国、ミストキングダムは王政の永世中立国。貿易船に忍び込み密航するぐらいしか行く方法が無いそこはユアンを何年も前から魅了して止まない。
…霧晴れないかなぁ…。
ユアンがそう思った直後、ユアンの鼓膜を「いたぞーっっ」という男の声が揺らした。
「?ェ?…」
その時、自分が作った料理を食べた権力者の子供がアレルギーで倒れた事や権力者がユアンが毒をもったと思い込んだ事、いたぞーっっという言葉を発したのがユアンを探していた兵士だと言う事を知る由もなかったユアンはその後ユアンを捉えに来た兵士にあっさりと捕らえられた。
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