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全員にアイスがいきわたり、美咲が自分の分のアイスを持って弥子の隣に座った。
「聞いたよ。大変だったね。辛かったでしょう?」
「……私はお母さんが厳しかっただけで、お父さんは味方でいてくれたから……」
「そっか…お父さんが…」
「あ、あの! み、未来から聞いたわけじゃないんですけど……その…」
「ああ、言ってなかったね。アタシも『かくれんぼ』だった。小学六年生の時に望に救われた。それが原因でアタシの家の事情も世間にばれてね、ここに来た」
「…そ…う……だったんですか…」
「そんな顔しないで。アタシはね、父親から離れたかったから」
「……そうなんですね…」
「うん、そう……
二人の話を切断するように、嵐が入り口から帰ってきた。
「くっはー! くそあちぃ……! なに、みんな!? めっちゃいいもの食べてる!?」
「うるせぇぞ、迅太。暑いならしゃべるな」
「望兄、ひどくない!?」
迅太が大きなスポーツバックを抱えて、帰ってきた。
「迅太? 早いね。練習終わったの?」
美咲がみんなの疑問を代表していった。
「うおぉ! 美咲姉、バイト昼だけか!」
ホールの柱の陰に座っているので迅太は最初気づかずに驚いた。
「昼から気温が急激に上がって、引き上げだってさ。熱中症者出す前に学校が帰すんだよ。文化部とかも一斉に帰ってたぜ」
「そうなんだ。大変だね。司兄さんからのアイス食べな」
「司兄さん来たんだ!?」
迅太はアイスを受け取って美咲に近づいて気づいた。
「………あれ? 新しい子入ったっけ?」
ぽかんと弥子を見た。
「近くに住んでる、弥子ちゃんだよ。未来のクラスメイトで理科の宿題一緒にやりに来たんだって」
「こ……ん……に………」
弥子も迅太に取りつかれたようにぽかんと見あげた。
「? 弥子ちゃん?」
反応が鈍いので、美咲は弥子に声をかける。
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