「コノトキガトマレバイイノニ」

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 一週間後、小学校と中学校は夏休みに入ったが、高校生たちは通っている学校で、それぞれ過ごし方が違っていた。  公立の遊域高校に通う、望、風夏、迅太は夏休みに入り、補修や部活に明け暮れている。私立の楽遊高校に通う、美咲と仁菜は、夏休みはまだ一週間先で、グラフィックデザイン学科の二人は、一学期の最後で課題の提出があるので、それに明け暮れている。バイトから戻ってきても、よく遅くまでパソコン室に引きこもり、勤しんでいる。  そんな中、中学二年生の笑空と笑海の双子は部活で土日以外は学校に通っている。二人とも家庭科部で、笑海は服を作り、笑空は新しい料理レシピの研究をしていた。  夏休みに入って三日目。笑空は家庭科室の調理台で材料の分量を量っていた。  家庭科室は教卓側を調理班が使用し、後ろを被服班が使用している。離れているとはいえ、笑空の手元が見えた笑海は首を傾げた。 「笑空? それ、ケーキの材料?」 「うん。そうだよ。藤田くんの妹が今日誕生日なんだって。それで、ケーキ作るの付き合ってって言ってたから」 「藤田くんの妹って小学四年生だっけ? 遊域西小学校だよね?」 「そうそう。そろそろ来るはず…あ」  一人の男子生徒が家庭科室に入ってきた。 「すいません。お邪魔します」  男子生徒は丁寧に挨拶をした。 「あ、藤田くん、おっはよー! そんなにかしこまらなくても、ここにいるのワタシら二人だけだよぉ」 「ああ、遊学妹もいたんだ。相変わらず家庭科部は幽霊部員ばっかなんだな」 「技術部の似たような感じじゃん」 「藤田くん。おはよう。ケーキの分量だけは量ってたよ」 「おお、ありがとうな、遊学! 助かるぜ」 「いいよ、ボクも好きでやってるし」  男子生徒は手に持っていたエプロンをつけて、手を洗った。 「んじゃあ、まずなにすればいい?」 「えっと、卵割って」  男子生徒は笑空の指示通りに動いて、型にスポンジ生地を流し込んでオーブンに入れた。
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