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「ぼくらにとっても、下の子たちにとっても、未来兄ちゃんの存在はでかいよねぇ。おれら一年前の兄ちゃんの様にできてるかなって思うけど、できてないと思うし、一年後今の未来兄ちゃんの様にできるかってさ、できるわけないよね」
「お前はお前で下の子に慕われてんじゃん」
「和斗も慕われてるじゃん。勉強嫌いだけどさ、出来ないことでバカにされるのは嫌だって、成績いいし、夏休みの宿題だって七月中に終わらせるために、読書感想文の本読み始めてるし」
「なんで本の事知ってんだよ!」
「織人(おりひと)兄ちゃんと威之介(いのすけ)兄ちゃんに聞いた」
「図書室組かよ…」
図書室組とは、施設の図書室によくいる人たちである。威之介、織人、騎士、成月(なつき)、希星(あかり)が特によくいる。
「威之介兄ちゃんのあの棒読みの読み聞かせ、なんか面白いんだよね。織人兄ちゃんは普通にうまいし」
「お前も普通にうまいけどな」
「和斗は昔和泉にせがまれてよく読んでたよね。和泉は最近ほとんど図書室来ないけど」
「あいつ国語の成績だけは悪いんだよな」
「まぁまぁ、お兄ちゃん。和泉の事は時間が解決してくれると思うよ。特に、未来兄ちゃんが中学上がったら余計にね」
「……そうだといいけど」
「今は、ほっといた方がいいよ」
「…そうする」
そこで部屋の扉が開く。
「早いな」
未来がランドセルを下ろしながらつぶやいた。
「未来兄が下の子に捕まりすぎなんだよ」
「和斗たち、たまに俺をおとりにして逃げることあるだろ」
その発言に二人はぎくりとした。未来はその反応に微笑む。
「……いいけどな。明日休みだし」
ため息と一緒に出た未来の発言に二人は苦笑いを浮かべて、その日は更けていった。
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