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「……どういう状況だ? これ?」
三十分ほど過ぎたあたりで、ウッドデッキの出入り口である大きな窓の内側で望(のぞむ)が呟いた。
「未来くんの理科の宿題で、花の絵を描くんだって、それで近所のクラスメイトと一緒に始めたら、みんな絵を描き始めちゃって」
それに答えたのは職員の璃子(りこ)。
「へぇ……ああ、弥子ちゃんか」
望はその窓に接する机に腰かけて、眺めている。
「望くん、混ざらないの?」
「勘弁してよ、璃子せんせ、さすがに暑いわ」
望は笑って返した。
「美咲(みさき)だったら喜んで混ざるだろうけどなぁ」
「美咲ちゃんの今日のバイトお昼だけでしょ? だったらもうすぐ帰ってくるね」
璃子は時計を眺める。
「あーそうだな」
十分後。噂をすればと、美咲が帰ってきた。
「ただいま……何!? 楽しそうなことしてる!」
美咲は施設の入り口に入ってすぐにウッドデッキの状況が見て取れたのだろう。駆け足で望の横に並んだ。
「未来が理科の宿題してたら、みんな集まったんだと」
「え!? 楽しそう!」
美咲は急いで部屋に戻って簡単な恰好に着替えて再び戻ってきた。
そして、そのまま暑さをものともせずにウッドデッキに出る。
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