ハチマキ石の白

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ハチマキ石の白

大人になった今でも、俺はくっきり思い出せる。 ユキジの手の中にあった、腐った、あきらかにヤバそうなお供え物たち。 「マトちゃん、食ベナ」 一緒に食べようと、何度も何度も誘われた、あの声を。 墓のお供えもんなんか食ったら、あの世に連れていかれるー。 あの頃、俺は、そう信じていた。 ビンボウな俺の村には、迷信がヘドロのように貼りついていた。 例えば妊婦が火事を見ると赤あざのついた赤ん坊が生まれるだとか、 妊婦が葬式に行くと、お腹の子が流れるだとか。 村の誰も彼もに変に迷信深いところがあって、 そういうおかげで、ユキジ親子のように、 明らかに生きる価値がないような人間も、墓の隅でかろうじて生かされていたんだと思う。 中でも「ハチマキ石」は、子どもたちの中でブームともいえるような迷信だった。 川が流れる俺の村。 その河原を埋める河原石の中に、ハチマキを締めたように白い筋がぐるっと一回りした石がある。 その石のことを俺たち子どもは「ハチマキ石」と呼んでいた。 そして、その石を見つけた者は、後ろ向きで後ろに投げないと親が死ぬー と言われていた。 それは単なる迷信じゃなかった。 証拠があった。 噂では数年前、村のある一家が、ハチマキ石の呪いで、子どもも含めて4人全員惨殺されたという。なんでもその家は一家全員惨殺された後、火をつけられて全焼したらしい。 実際、村には、その家の建っていた場所だという空き地もあった。 俺たち子どもは、そこでは決して遊ばなかった。 ハチマキ石に連れていかれる、そんな気がした。 ぽっかりと空虚に広いその空き地には、何もなく、石ころ一つ、落ちていない。 その日、いつもの親父のお使いで、河原を歩いていた俺は、ハチマキ石を見つけた。 5センチくらいの丸い石に、くるりと巻かれたハチマキ模様。 (父ちゃん、母ちゃんが死ぬのは勘弁や)
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