ハ・ツ・ネ・ツ・オメガ 5

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 織花は泣きじゃくった。子供みたいに目元をこすり、それでも言葉がとまらない。  織花が何を言っても、壮介は黙ってほほ笑むだけだった。ただ、ちゃんと聞いている、という証に、時々小さくうなずいてみせる。 「ぼら! ほら、そう! あたしがなんにも言わないうちから、壮介さん、あたしの考えてること、全部、ぜーんぶ、わかってる! そんで、あーしろ、こーしろって……、やだって思っても、結局、壮介さんの言ったことのほうが正しいし! なんで!? なんで壮介さん、そんなにあたしのことがわかるの!? αだから? αの人はみんな、そうやって他人のこと、簡単にわかっちゃうものなんですか!?」 「違う。αとかΩとか、関係ないさ」  ようやく、低くおだやかな声で、壮介は答えた。  壮介の手にはウイスキーの水割り。スーパーで買った缶ビールはとっくになくなり、部屋に常備してあるらしい洋酒を持ち出してきたのだ。 「強いて言うなら――、そうだな、俺はきみより少しだけ長く生きて、その分、失敗もたくさんしてきた。きっとそのせいだ」
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