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「失敗って……」
「ああ。仕事で大ポカやらかしたこともあるし、これでも、こっぴどくふられたことだって、二度や三度じゃないんだぞ」
「……嘘」
ぼそっと、つぶやくように織花は言った。
「信じられない。壮介さんをふる人がいるなんて」
――だって……、だって。
壮介の大きな手は、いつの間にか織花の肩に回され、織花をそっと抱き寄せていた。
あたたかくて、強くて、優しい、手。肩に置かれた手のひらだけで、織花の全部を包み込んでくれているみたいだ。
――こんなに優しい手を持つ人を、嫌う人間がいるなんて。
とても信じられない。
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