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Qは頷いた。
「以前に彼を見ているから分かるわ。ギャグマンガに出てくる男の子みたいな顔をして表情一つ変えずに人を殺せるやつだった。指の指紋を全て消しているのも彼の特徴なの」
8は腕組みをした。
「顔は整形で変えられる。指紋は薬品で消すことができる。今の世の中、自分そっくりの別人を作るのにそれほど金はかからないぜ」
「そういう時は光彩よ」
彼女はスマホを取り出した。
「アバターが一般人に成りすましていた時、虹彩認証のセキュリティを使ったのことがあるの。その時のデータを手に入れてあるから」
「高かったろ」
「高級外車が二、三台分」
8がアバターの瞼を開き、Qがスマホをかざした。
スキャンが始まった。
数秒で本人認証の画面が表示された。
「やはり、アバター本人だ」
「伝説の殺人者が死んだんだね」
セレンディピティの効力がそろそろ消えようとしていた。二人は遺体安置台の横置いてある袋をのぞいた。お札が数枚、小銭がいくつかあったが、携帯電話もスマートフォンもなかった。書類に「身元:不明」と書いてあったが、確かに所持品から身元を特定する手がかりはなかった。殺人者アバターは意図的にそういうものを持たなかったのだ。Qは札と札の間に何か挟まっていることに気がついた。取り出すと1枚のメモ用紙だった。広げるとそこには「大人病。」と書いてあった。Qと8は顔を見合わせた。「なんだ、これ?」
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