1 彼どんなモノにでもピカピカに輝いていた時はある。

3/5
前へ
/15ページ
次へ
中学生になった彼は体を鍛えるためレスリング部に入部した。 美術の時間に習ったローマ時代の彫刻のような体を手に入れるためだ。 その計画は中学の3年間で成功した。 背は親を超えて細マッチョのイケメンに成長した。 その頃、彼は「いつかこの家を出る」と心に決めていた。 ローン返済のため両親は働き続けていた。 子供が成長した分、二人は確実に歳を取っていた。 父の頭は薄くなり、体つきはボテボテになった。 母の化粧は濃くなり、体つきはボヨンボヨンになった。 風呂場の鏡に細マッチョの体を映しながら、どうしてあの両親から自分のような子供が生まれたのだろうと首をかしげた。 DNAの奇跡というか気まぐれというか、トンビがタカを産んだのである。 高校には念願の進学校に入学できた。 両親は大喜びした。 そんな両親を横目に彼は心の中で「この家からオサラバしてやる」と誓った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加