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オフィス街にあるカフェ【sort】は、昼時ともなれば店の外まで人の列ができる。今日は日替わりのチーズハンバーグランチがよく出た。おかげでカフェタイムに入った今でも、香ばしい匂いが店内に残っている。
カナタはランチタイム用のメニューが書かれた看板を店の中に入れ、ひと息ついた。
これからの時間はぐっと人の波が落ち着き、ひと時の休息を取りたいビジネスマンがぽつぽつと席を埋めるのが日常だ。
カフェ【sort】はオーナーでシェフのツクモと、店長のヒヨドリが切り盛りする三十席にも満たない小さな店だ。番の関係にあるふたりが作る温かな雰囲気が店全体に満ちている。店にはグリーンが多く配置され、やわらかな照明がナチュラルウッドのテーブルを照らす。
カナタたち店員の制服もコットン素材の白シャツに細身の黒のパンツ。合わせる膝上丈のカフェエプロンはライトグレーと、ナチュラルテイストにまとめられていた。
いつものように合間を縫って休憩に入ろうかというとき、カランカランと入口のドアベルが鳴る。昔ながらの喫茶店にありそうなカウベルだ。店内に響くそのあっけらかんとした音色をカナタも気に入っている。
「いらっしゃいませ」
二年勤めるうち板についた営業スマイルで振り返ると、背の高い男がひとり案内を待っていた。
大手企業が立ち並ぶ通りから五十メートルほど裏に入った立地のおかげで、身なりの良いビジネスマンは珍しくない。けれど男はそんな中でも不思議と目を引いた。
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