□運命の番□

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 九月に入った途端、窓から吹く風が変わった。去年はもっと残暑が厳しかったような気がする。冷夏と言われただけあって、今年は秋がくるのが早いようだ。  空気を入れ替えるために高窓だけを開け、カナタはリビングに置いたベビーベッドを振り返る。 「あ」  そうだった。今日はあの子がいない。よちよちと歩き出したセイジは、シイバの母親のところで預かってもらっていた。人懐っこいセイジは、おじいちゃんとおばあちゃんが大好きだ。  これまでもシイバの両親の協力を得て、シイバとふたりだけの時間を持ってきた。最初は【sort】でお茶を飲むくらいの時間。それから買い物に行けるくらいの時間。映画を観るくらいの時間。ゆっくりとディナーを楽しめるくらいの時間と、セイジの成長に合わせてその時間は伸びていった。  そして今日は更に特別な時間を貰った。少しだけ会社に顔を出してくるといって出ていったシイバも、もう少しで帰ってくる。今夜はふたりで食事をし、そのままそのホテルに泊まってしまおうというのがシイバのプランだ。
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