□運命の番□

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 完全にふたりきりの夜はセイジが生まれてから初めてだった。 (うまく、出来るかな?)  不安はあるものの、期待のほうが上回っている。 「アマギさんが来てから寝ちゃってたのか……」  アマギはシイバの母親だ。頑固なところは母親譲りというだけあって、芯の通ったその人はシイバによく似ている。カナタのことも初めから手放しで受け入れてくれた。普段は家族三人の生活に口出しするようなことはしない。けれど困ったことがあればすぐに手を差し伸べてくれる。  カナタはセイジを預けたあとでシャワーを浴び、肌を手入れした。ひとりでゆっくりと風呂を使うのも久しぶりでつい長湯をしてしまったのがいけなかったのか、身体が重だるかった。横になるだけでもいいかと思いベッドに身を横たえていると眠り込んでいた。  せっかく特別な時間を貰ったのに風邪を引いたんじゃないだろうか。念のために薬を飲んでおこうかと考えた時だ。玄関扉が開く音がした。 「おかえりなさい」  気だるさなんて忘れたようにカナタは駆けだす。靴を脱いだシイバは駆け寄ったカナタに優しく微笑んだ。
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