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ベッドに倒れこんだカナタをシイバの大きな手が撫でた。髪の毛を優しくゆっくりと。本当はそれでも少し感じてしまうが、知らない顔でシイバの肩にすり寄った。
「発情……終わっちゃった」
「ああ」
倦怠感は残るが、どこかすっきりとした不思議な感覚だった。身体は様々な体液で濡れているというのに、世界が澄んでいる。
「痛むか?」
「え…………ううん、平気」
咬み痕はひりひりと痛むが、全然平気だった。湧き上がる幸福感で口元が緩む。
「カナタ?」
「すごく、不思議。身体がどうなったのか全然分からないけど、ここにシイバさんの咬み痕があるって思うだけで、幸せでたまらない」
抑えようとしても抑えきれない幸福が笑い声となってカナタの口からこぼれ出る。カナタにつられるようにシイバも笑みを称えた。
「俺もだ。愛している。もう絶対に離さない。天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん……俺たちはどこにいても一緒だ」
「……はい。絶対に離れない」
なにをもってして運命と言うのか、『運命の番』がどこまで約束された存在なのかも知らない。けれど、十年もの間離れていて、ふたたびめぐり逢った。好きで好きでたまらない人に出会えた。
だからもう離れない。それはふたりの意思だ。
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