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そしてまた翌日、翌日とシイバは店に顔を出した。会社を抜け出して取る二十分ほどの休息は、忙しいシイバの気分転換にちょうどいいのだと言う。
ブランマンジェはアリシマ研究室で働くメンバーたちに好評だったとシイバは報告してくれた。副社長ともなればビルの高いところで会議や書類仕事に追われているイメージだったが、カナタの想像とは違いシイバは研究室を頻繁に訪れているらしい。
「アリシマ研究室のメンバーは私の直属で動いてもらっているんだ。組織から外れて窮屈な思いをさせているんだから、もっと労うべきだ、と土産を持って行ったのにアリシマに怒られた」
「そんな……」
「あいつは涼しい顔をしたまま嫌味を言うからな」
参ったと苦く笑うが、その表情は楽しそうに見える。昨日からカウンター席に座るようになったシイバは、カナタが接客中の時を除いて細々と話しかけてきた。
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