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次の日、私が家へ帰るとやはりお父さんの姿はなかった。
私はキッチンへもリビングへも行かずまっすぐ自分の部屋のドアを開けると、必要なものを全てスーツケースに入れ始めた。
とりあえず服は二着ぐらいで諦めよう。
そんなにたくさんは持っていけない。
昨日、友達に事情を話すと、家に来てもいい、と言ってくれた。
昔から頑張って貯金していたとはいえ、そんなにお金を持っていない私はとりあえずお世話になることにしようと思った。
どうしても必要な、大切なものだけをしまい、私はお父さんの部屋へ行った。
そしてある引き出しを開ける。
そこにはお母さんの写真。本当はこれも持って行きたい。
とても迷った。だけど、置いていくことにする。
これがなくなったらきっとお父さんは本当にダメになってしまうから。
お母さんの顔を目に焼き付けるようにジッと見つめ、目を閉じると、私はそっともとにあったところへしまった。
私はそのままでて行こうと思っていたが、お父さんの部屋のクローゼットを開けた。
他にもお母さんの写真があったらいいな、と思って。
流石に悪いとは思いつつも、いろいろなところをあまり触らないようにしながら見る。
そして、それは突然落ちて来た。
「アルバム……?」
普段お父さんは見ていないのか、とても綺麗だ。
私はドキドキしながらそっとめくった。
すると、そこにはたくさんのお母さんが。
私が見たことあるあの写真よりもずっと若いものもあれば同じくらいのものもある。
その全てが笑顔で、そして、一緒に写っているお父さんも今では想像できないくらい笑顔だ。
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