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手紙の最後はこう締めくくられたいた。
『あなたのそばにいることができないお母さんを許して。あなたの笑顔がいつまでも、いつまでも続きますように』
私は手紙を封筒に入れると再びアルバムをめくった。
この笑顔の下に涙を隠していたことがお母さんもあるのだろうか。
そして、いつも見ていたあの写真。
私を抱きながらお母さんはどんなことを思ったのだろうか。
もう聞くことなんてできない。だけど、お母さんの望みを叶えることはできる。
まだ遅くないのなら、私はお父さんと話さなきゃいけない。
私は立ち上がってリビングへ行った。
アルバムと手紙はそのままに。
今日はそのままお父さんの帰りを夜まで待つつもりだった。
リビングへ行った私は我が目を疑った。
「ケーキ……?」
どうしてケーキがあるのか。
誰が用意したのか、なんて私じゃないのだから一人しかいない。
「お父さん……」
ケーキの上のプレートには誕生日おめでとう、の文字。
そう、今日は私の誕生日。だけど、今まで一度も誕生日を祝われたことなんてない。
今日はめでたい日じゃないから。
あの写真、私を抱いているお母さんの写真は私が生まれてすぐ、その日にとられたものだった。
そして、写真を撮ったその日、お母さんが他界した。
つまり、私の誕生日=お母さんの命日、となるのだ。
おめでたくなんてない。
その時、玄関のドアが音を立てて開いた。
「ああ、帰ったか」
リビングへ入って来たお父さんは私を一瞥してなんでもないように言った。
スーツじゃなくて、私服。仕事へ行っていたわけじゃないのか。
そして、手に持っていた小さな包みをテーブルの上に置くと何も言わずソファに座った。
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