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「やめてよ!私、今日までお父さんを嫌って、嫌われて、生きて来たのよ。今更そんなこと言われたって意味がわからない」
「……俺は、嫌ってなんてない。ただ、お前も母さんみたいにいなくなることが怖くて、最低限しか関わりたくなかっただけだ」
嫌ってない?怖かった?お父さんが?
「だが、もうそれは止める。お前の話を聞いて、全部受け止める。父親として。昨日お前が言っただろ?嫌うならちゃんと嫌え、と。俺もあれから考えた。だが嫌うなんてできない。朝飯だって弁当だって用意しないと心配だ。晩に帰ってきてお前の飯がなかったら、っていつも不安だった。だから、嫌うことができないから、今からでも父親としてお前のためになれたら、と思ったんだ」
気がつけば私の目からは再び涙が流れていた。お父さんがそんなことを思っていたなんて全く気づかなかった。
苦しんでいたのは、私だけじゃなかった?お父さんもだった?
その時にさっき読んだお母さんの言葉を思い出した。
『お父さんはとても弱い人なの』
ああ、そうだったんだ。お母さんは全部知っていたのね。
「もし、今までの俺を、あかりが許してくれると言うならこれからも、この家にいて欲しい」
私を溢れる涙を手でぬぐいながらただ頷いた。何度も、何度も。
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