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「ーー」
小さな声。普通なら聞こえないだろうその声がなぜか私には分かった。
そして頭が真っ白になった。ショックだったのだ。
分かっていたのに。分かっていたのにショックだった。そしてそのままバタバタと廊下を走って外に出た。
どうしてお父さんがこの時間を家にいたのかは分からない。
たまたま近くに用事があって、その時に一度帰ってきたのかもしれない。
仕事が早く終わったのかもしれない。
しかしそんなことはどうでもよかった。
久しぶりに見るお父さんは私の記憶にあるよりも、もっと小さく、苦しそうに見えた。
だけど、私は嫌われている。
そんなのはわかりきっている。
涙を流しながら家の近くの公園に行くと、そこにはたくさんの子供がいた。
どのくらいそこにいただろう。
気がつけばあたりは赤く染まり、子供達はお母さんに連れられて帰って行っていた。
私だって何度夢見たことだろう。
幼い頃に、公園で遊ぶ私を迎えにきてくれるお母さん。
だけど、どれだけ待ってもお母さんはもちろん、お父さんも迎えにきてはくれなかった。
そして、いつも泣きそうなのをこらえながら家への道を歩いた。
そう、何度夢見て何度絶望したのだろう。
夢なんて、希望なんて持つだけ無駄だ。もうそれがわかる年の私はそんなこと望まない。
下を向いて何も考えずにただ座っていると誰かの声が聞こえた。
「あかり?」
はっとして顔を上げるとそこにいたのは見慣れていて、だけどめったに会うことのない人。
私を嫌っている人。
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