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「へい毎度あり!」
そう言っておやっさんは銃と服をおかもちに入れて自転車で去っていった。ああ、あの銃と服を換金して新しいどんぶりを買うんだな、と分かった。分かったよ、そのしたたかさ!
ディン・ディディンは止まらない。おやっさんが去って行った後も何事もなかったかのように歩き続ける。
俺は、呆然と立ち尽くした。というか足撃たれて痛くて、もうディン・ディディンを追うことができない。
「ケガしてますね、大変!バーで手当てしますよ」
少女がそう言って近寄ってきてくれたのがありがたかった。
ディン・ディディンの背中がどんどん遠のいていく。俺は遠く離れていくディン・ディディンに向かってこう言った。
「ありがとう!ディン・ディディン!最後にひとつ聞かしてくれ!どうやって宙を歩いたんだ?」
ディン・ディディンは振り向かずに右手で手を振りながらこう答えた。
「いつもより速く歩いただけだ。またどこかで会おう」
そう言い残して、ディン・ディディンは地平線の彼方へと歩いて行った。俺と少女は去って行くディン・ディディンの背中を見つめていた。夕陽にディン・ディディンの背中のシルエット。どこまでも画になる男だ、ディン・ディディン!
その後、ディン・ディディンがどこに行ったのかは知らない。だから俺は、またディン・ディディンを追う。今度は奴の好物のラーメンの味を知るために。
(終)
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