ディン・ディディン現る

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ザコ男は、この無表情な態度が気に食わなかったらしい。何度も銃をぶっ放す。ズキュンズギュン!だが、ディン・ディディンに弾は当たらない。だまっていた他の男2人も銃をうつ。しかし、何発撃ってもディン・ディディンは華麗によけていく。まるで弾道が見えているかのようだ。 「くそ!なんで当たらねえんだ!」 いらだつ荒くれ者どもは執拗に銃を撃ち続ける。「おっと失礼」と言ったディン・ディディンはザコ野郎の肩にぶつかった。ザコ野郎はバランスをくずし尻餅をついた。頭を椅子の角にぶつけて失神するその瞬間、狙いをはずし、仲間を撃ってしまった。もう1人も流れ弾にあたり、荒くれ者どもはその場に倒れた。 「なんてことだ!避けるだけで3人の荒くれを倒してしまうとは!」 俺は感嘆した。ディン・ディディン、噂に聞いていたが只者じゃない。 「ああ、ようやく静かにしてくれたか。あまり銃をぶっ放されても困るんだ」 そう言って、ディン・ディディンは無表情でスタスタと歩いてバーを出ていった。俺は、慌てて奴のあとを追いかけた。砂埃が舞う町の中、ディン・ディディンはどこに向かうかも分からない足取りでふらふらと歩いている。 「噂で聞いたぞ!お前がディン・ディディンだろ!さすがだ、噂どおりどこまでも歩く男!おい、止まれ!礼を言いたい、止まってくれないか?」 俺はディン・ディディンのあとを追いかけながらこう言った。しかし、こちらを振り返りつつもディン・ディディンは歩くのをやめない。 「酒場でも言っただろう?俺は歩くのをやめられない。酒場の隅っこで迷惑にならないよう足踏みしていたんだが、やっぱり動いてしまった。おかげで知りもしない男たちを気絶させちまった。申し訳ねえとは思ってるんだ、しかし俺は歩くのをやめられない」 歩く男、ディン・ディディン。こいつは一年中、常に歩いていると言われている。寝ている間も歩いているため一晩で寝ながら3キロも移動しているという噂がたつほどだ。そして、ディン・ディディンは歩くのが速い。フラフラしているのに妙に速い。
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