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「あー、もうっ! 手詰まりになるの早すぎっ!」
捨て鉢になって後ろに倒れ込めば、フロアベッドの安物マットレスが軋みをあげて、僕の体を受けとめる。
ふわりと立ちのぼるお布団の匂いが、まるで「もう諦めて昼寝でもしちゃえよ」と慰めてくれているようだ。
悪夢にうなされたせいか、たくさん眠ったはずなのに、ちっとも疲れが取れていない感じがする。
起きていたって特別やることもないし、このまま寝直してしまうのも、ありかもしれない。
誘われるがまま、僕はもぞもぞとベッドに潜り込み、パソコンで酷使した目を閉じる。
(ひょっとして気にしすぎなのかな。僕の人形、今のところ悪用されそうな気配ないし。
しょっちゅう夢に出てくるあの男も、僕の妄想が生んだ架空の人物かもしれないし)
うじうじ悶々とした、すっきりしないこの気持ちを、標準語では何というのだろう。
栃木弁では「いじやける」と表現するのだけれど。
考えごとをしているうちに、だんだんと意識がぼやけ始めた。
ゆらゆら、ふらふら。
水に投げ込まれたコインのように、不規則に落ちていくような感覚。
すごく心地いい。
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