東京イケメン見聞録

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 これは僕の大学時代の先輩である森田さんの観察日記だ。森田先輩はイケメン、イケボというハイスペックで、身長が高く、エヴァンゲリオンみたいな体型をしている。  見た目はかなりカッコイイと思うのだが、彼はその独特のセンスと、すぐに「うんこ」とか言ってしまう小学生レベルの下ネタ好きのせいで、その魅力が十分に理解してもらえていない。  僕は先輩と付き合いが長いので、本当は彼がかなり尖ったセンスの持ち主で、ある種の天才であることを知っている。しかし、先程書いたような理由で他人からの評価が低すぎることを僕は常々残念に思っていた。  そんなわけで、これから始まるのはそんな森田先輩が如何に非属の天才かということを記した観察日記である。 ◇  秋が深まってきた頃、僕は久しぶりに東京に行くことになった。せっかく東京に行くならと、僕は東京でデザイナーをしている森田先輩に会うことにした。早速ラインで連絡を取ってみると、先輩はすぐに「飲みに行こう」と誘ってくれた。一年ぶりくらいだろうか。また彼のハイセンスな話が聴けると思うと、僕の胸は自然と高鳴っていた。  東京に着き、指定された待ち合わせ場所で僕が森田先輩を待っていると彼は人混みの中から颯爽と現れた。身長が高くスタイル抜群なのでとくかく目に付く。お洒落なシャツと細身のズボンがよく似合っている。仕事が忙しいのか、先輩は少し無精髭を生やしていたが、それがまた渋さ演出してしまっているあたりが流石である。 「お待たせ。久しぶりに会えて嬉しいよ。今日はとっておきの店があるからそこへ行こう」  そう言って先輩は歩き始めた。実に爽やかである。一体どんなお店に連れていってくれるのだろうか。僕の中で期待が高まる。 「実はデザイナーとして独立してね。今はフリーランスなんだ」 「わ、すごい。おめでとうございます!」 「まぁ贅沢できるほどではないんだけど、今は少し金があるんだ。今夜は俺に奢らせてくれ」
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