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「俺さ、女の子の履く網タイツについて考えてみたんだよ……」
それは何の前触れもなく始まった話だった。もはや目の前にいる美女達など先輩の眼中にはない。一体何のためにガールズバーに来たのか。衝撃を受ける僕を尻目に彼は続けた。
「網タイツ履いている女の子っているだろう? あれってなんだろうなーって俺はずっと考えていたんだよ……」
先輩の持つグラスの中の氷がカランと音を立てる。もはやここには僕と先輩しかおらず、ただ無限の空白だけがその場に広がっているが如く、何もかもが視界の外へ消し飛んだ。
「一体……網タイツとは何なのです……?」
僕はそう言いながら唾をゴクリと飲んだ。張り詰めた空気にその音は不自然に大きく響いたような気がした。
「俺わかったんだよ。まずイメージしてくれ。網タイツってな、網目状になっているだろう?」
「はい……」
「それはつまりどういうことか、お前にわかるか?」
わかるわけがなかった。何故ならおそらく普通の人間は「網タイツ」について思索を巡らすことなどまずないからだ。
僕が答えられないでいると、先輩はグラスの中のウイスキーと氷の色合いを楽しみながらこう言った。
「女の子の足というのは千差万別だ。太い子もいれば、細い子もいる。太ももはふっくらしているが、ヒザ下はシュッとしている子、逆に全部ムチムチの子もいる。すなわちそれこそが彼女たちの持つ美的個性いうわけだ。そしてそこに網目状のものを装着するとどうなるか……」
「どうなるんですか!?」
「網目が、彼女たちの足のフォルムに合わせて伸びたり縮んだりする!!」
僕はその瞬間、あまりのことに声を出すこと忘れていた。
「その結果何がもたらされるか。そう、彼女達の足のディテールがより立体的にそこに浮かび上がるのだ!」
電流が脳内を駆け巡る。
「それはすなわち彼女達の美的個性の増幅に他ならない!! 我々は彼女達が網タイツを履くことで、より一層彼女達の足の持つ優美な曲線や、豊かな肉感を味わうことができるのだ!!!!」
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