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「孝平くん、夢の結末って、何種類あると思う?」
「夢の…結末、ですか?」
唐突なその質問に、孝平は即座に答えを返すことができなかった。
「そう。夢の結末。私は、夢には二種類の結末しかないと思ってた。叶うか、諦めるか。そのどっちか」
コートのポケットに手を突っ込んで、響子は微かに笑いながら話を続ける。
「でも私はあの時、夢には三つ目の結末があることに気づいたの。そして私は、その三つ目の結末を選んだ。叶えるでもなく、諦めるでもない、夢の三つ目の結末…、『託す』を選んだの」
「夢を…、託す…?」
「そう。私のあの歌は、この村を歌った歌。この村で生まれ育ったからこそ作れた歌。都会にいたら絶対に作れなかった歌。私はこれからも、そんな歌を作り続けたいと思った。この村で歌い続けたいと思った」
口を挟む余地さえない孝平はただ、キラキラと輝く響子の瞳を見つめることしかできない。
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