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でも、夢は、そう簡単に捨てられない。
ただ、その夢をいつまで追いかけたらいいのか。
このまま、追いかけ続けていいのか…。
それが、わからなかった。
だからその答えを探すために、帰ってきた。
この村が、その問いに答えを返してくれるかどうかはわからないけれど。
少なくとも、都会の喧騒や雑踏の中では、答えなんて見つからない気がしたから。
「で、どうするの?一応、昨日ね、健一さんに聞いたらね、ウチなら泊まっても全然おっけー、って言ってたけど」
「そっか、じゃあしばらくそうさせてもらうかな。しっかし、ずいぶんと手回しがいいな、お前」
「そりゃあもう、できた妹ですから。ダメダメな兄貴のフォローがとーっても大変なのです」
真由美が偉そうに胸を張る。
そして、孝平の同級生でもある健一の家の方向に向け、真由美はハンドルを切った。
「でもさ、お兄ちゃん。これ、マジな話」
前方を見つめたまま、真由美は声のトーンを少し落として、言った。
「村に、帰ってきなよ。お父さんのためにも」
「…………」
孝平は何も言わず、ただ、窓の外の景色を眺めていた。
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