妹の恋人事件

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『ねぇ……おにいちゃん。どうして私だけおちんちんがないの?』  あれはいつの頃だったろうか。  まだ妹が小学生になる前……。  妹が悲壮感に溢れた表情で、縋り付くように俺に問いかける。  自分の下着を下して、自分に付いているだろう、生えてくるだろうと思っていたものが何故無いのかと、下半身を何度も殴りながら言う。  あの時、俺はその妹の問い掛けの理由も深く考えることなく、 「なんで?」  そう妹に尋ねたんだ。  反して妹は、俺のただ素直な問い掛けに悔しそうに言った。 「だって、お父さんも、おにいちゃんも、ゆうきくんも、まなとくんもみんな付いてるんだ……どうして私には無いの? 大人になったら生えてくるの? ねぇ、なんで? おにいちゃん」  どんどん妹の表情が泣き出しそうになる。 「それは――、」  俺はその時、妹に対する配慮なんて出来るわけがなかった。  俺だってその時まだ、小学生で、妹に投げかけた答えはとても陳腐なもので、妹が納得するような答えは出せてやれなかったんだ。 「それは、お前が女(、)の(、)子(、)だからだよ」  そんな当たり前であって、妹からしたら一番辛い事実を告げてしまった俺だったが、その後の妹の絶望感と云ったら、この出来事以上なかったかもしれない。  
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