56人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっと、玲くん。本当に俺に宛てた手紙だったのか?」
俺は率直な疑問を投げかけた。正直、俺も混乱している。
すると、玲くんはもじもじ身体を捻らせて、
「は、はい! 僕、先輩を入学式に見かけた時から気になっていて……それでいつも先輩のことを見ていました! 先輩っ!」
「は、はいっ!」
「好きです! 僕とお付き合いしてください!」
「っ!」
玲くんは女性っぽくぺこりと頭を九十度に下げる。
俺はそれを見て確信した。
玲くんは恐らく妹と同じタイプの人だ……。
その玲くんから今俺は、告白されたんだ!
「ご、ごめんなさい!」
俺も頭を下げて言う。
ごめん、玲くん。キミが悪いのじゃないのは分るんだけど、でもいきなりの告白じゃあ無理だよ……。
「……僕が男だからですか……?」
頭を下げたままの俺の頭上からぽつりと悲壮感に満ち溢れた声が聞こえた。
俺は頭を上げて正直な気持ちを伝えた。
「いや、えっと。正直、性別が男子だからっていうのはあるよ。だけど、玲くんのこと何も知らないし、いきなり付き合ってくれって言われても、ね」
体の良い断り方をしたつもりだった。だけどそれは逆に、
「だったら、僕のことを知って貰えたらいいんですか?」
少し涙目になりながら零す玲くん。
俺は少し困って、
「いや、でも……」
「僕、本気なんです! 確かに僕のこと、先輩は何も知らないと思うので、一度デートして貰えないですか?」
「え?」
「デートしてくれたらまた告白します! その時、また答えを聞かせてください! それでダメだったら僕も諦めます」
「本当に?」
「はいっ! 二言はありません!」
キラキラした真剣な眼差しで見つめられる。その一生懸命さと健気さに気圧され、
「う、うん……分ったよ」
押し負けてしまった。
「やったあっ! 念願の先輩とのデートっ! すっごく嬉しいっ! ふふ」
手で握り拳を作り可愛くガッツポーズをして満面の笑みを浮かべる玲くん。
……正直な話、妹のことを考えてしまっていた。
多分、外見と仕草を見ていると、玲くんは妹と同じGIDのタイプの人なんだと思う。
そんな子が、ノーマルでストレート(※GIDでない人の俗称)の俺に告白しようっていうんだ。
絶対に勇気がいったと思う。
それなのに、無碍にするわけにはいかない。
なんだか、そう思ってしまったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!