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俺は嘆息して、
「じゃあ、また連絡するからケー番教えて」
「はいっ!」
言うと玲くんはケータイを制服のパンツから取り出すと、俺と電話番号交換をした。
「登録完了しました!」
「うん。じゃ、じゃあまた連絡するから……」
「はい! 先輩のケー番、嬉しい……あ……」
突然、玲くんの瞳から一筋の涙が零れたのだった。
「ど、どうした!? 俺、何か悪いこと言った!?」
俺はもしかして細心の注意を払っていたけど、何か傷付けるようなことを言ってしまったのかと焦っていると、玲くんは涙を拭いながらかぶりを振って、
「いいえ! ちょっと嬉しくって」
「え?」
「だって……先輩、思っていた以上に優しい方だったから……本当に、嬉しいだけなんです。驚かせてごめんなさい」
「あ、ああ……」
顔を紅潮させながら申し訳なさそうに微笑む玲くん。
なんだかその姿は女の子より女らしくて、胸が色んな意味で締め付けられた。
本当に、どうやら俺のことを想ってくれているみたいだ。
「じゃあ先輩、今日は本当に有難うございます。失礼しますね」
「お、おう。気を付けてな」
「はい! 先輩も!」
はにかんだ笑顔を向けて俺に一生懸命手を振る玲くん。
……俺も帰ろう。
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