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「私と乃蒼と、兄貴とその人! それだったら二人きりにならないし、そういう男子だったら私たちがいたら気分が楽だと思うし」
「なるほど……」
「乃蒼、良い?」
妹が乃蒼ちゃんに尋ねる。乃蒼ちゃんはこくんと頷くと、
「良いよ」
にこりと微笑む乃蒼ちゃんのその笑顔はとても可憐で可愛かった。
ああ……なんだか妹が羨ましい。
「よし、じゃあそうしようよ!」
妹が親指を立てて言う。
「完璧なデートコースをコーディネートしておくよ! あー楽しみが増えた!」
妹は楽しそうに笑う。
確かに。
始終、玲くんと二人きりでいるよりも、同じ悩みを抱えている妹がいてくれて、その妹の彼女までいてくれるとなると、玲くんも気持ち的に希望を持てるだろうし、俺も会話と時間を持て余すこともないと思った。妙案かもしれない。
「四人でならなんとかなりそうだな」
「それに」
「ん?」
「兄貴のことを好きだっていうその男子を見たい!」
「お前……それが一番の目的だろう……」
「にしし」
妹は悪戯っぽく笑う。この顔、これにどうやら俺は弱いらしい。
「っていうか。お前、一年の子なんだけど、もしかしたら知っている子だったりしないか? 中郷玲って云うんだけど」
「え? 中郷って……あの可愛い子か!」
妹が俺を見て後ずさる。
え? なんでそんなに驚いてんのこいつ。
「なんだ、やっぱり知っているのか」
「兄貴……なんであんな綺麗な子にモテてんだよ! こんな三白眼で無骨な奴が!」
「知らねーよ! なんか入学したとき一目惚れしたって言われたんだ」
「覚えてないの?」
「うーん……あの時、委員会で警備していたから色んな生徒見ているしなぁ……わからん」
「ふーん。そっかー……でもやっぱあの子、そうだったんだねー」
妹が腕を頭の後ろで組みながら話す。
すると隣にいる乃蒼ちゃんが、
「中郷くん、モテるよね」
「うん。女の子からすごいモテてるんだよ、あの子」
「そうなのか?」
「うん。だけど浮いた話が一切無かったんだよね。それになんていうか……」
「なんていうか?」
「同じ匂いがしてた」
「ふ、ふーん。そんなもんなのか」
「うん。そんな感じ」
妹は遠い目をしながら何かを思っているのか分らないが、そう言った。
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