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玲も水の入ったコップを何度も口に運び、そわそわしているけど、こういうとき、妹ならなんて声を掛けるんだろうか。
何もできない俺は少し情けない気がする。と、思って、話を振ってみた。
「あ、玲。お、お前も普通科だけど、な、なんか将来やりたいこととかあるのか……?」
あ。なんかいきなりわけのわからない話だったかも……しれない。でも、出た言葉は消せやしない。現実って厳しい。
反して、玲は嬉しそうに、
「そうですね。僕、医学部に行きたいので、あの学校に入ったんですよ」
「医学部? また、大変そうな……」
「僕の家、病院なんです。だからそれで」
「そうなのか。すごいなお前の親」
言うと、玲は少し顔を曇らせた。
「……そうですね」
苦笑しながら玲はコップの水を飲んだ。
話、まずかったかな……? 親の話とか、地雷を踏む場合もあったのに。変なチョイスをしてしまった自分に自己嫌悪するがそれを取り繕うこともできない。
俺も意味なくコップの水を飲む。
それから俺たちはまたぎこちない雰囲気を纏いながら沈黙した。
気の利いたことも言えない俺はダメな男なのではないだろうか……。
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