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妹はきっと、買い物に行くなら俺と同じようなショップに入ったりするはずだ。だけど、逆に乃蒼ちゃんは女の子が好む店を選ぶ。そこに妹も着いていったりしているわけだから、乃蒼ちゃんの好きそうなものが玲にも喜んで貰えると踏んだんだろう。
これも妹のモテスキルであり、同じ悩みを抱える者として、その立場を生かして選んでくれているのだろう。
きっと俺と玲と二人だったら、こんな気の利いたデートも俺はエスコート出来なかった。
今度妹になんか奢ってやらないとな。
そして俺たちは目的の店に着いた。
そこはファンシーショップで、洋服から小物まで色んなものが揃えられていた。
主にパステルカラーで包まれた、可愛らしいバッグや、小物、日用雑貨があり、大きめのテナントの中に、女の子が楽しそうに品物を吟味している。
「わあっ! 可愛いっ! 僕、こういうお店入るの初めてなんだよね! 嬉しいなぁっ! わーいわーい」
玲は目を輝かせて妹たちと中に入って行った。
俺はというと、なかなか中には入りづらく、入口でうろうろしていると、一度店内に入って行った妹が俺の方に来て、
「兄貴、玲くん喜んでいるじゃん。良かったね」
「うん。アリガトな」
「えへへ。どういたしまして」
「やっぱりすごいわ、お前」
「別に私がすごいわけじゃないと思うけど」
「いーや、すごい。モテるのが分るし、今日はお前たちがいなかったら危なかった」
「そう? なら兄貴も中に入って玲くんの買い物付き合ってやりなよ」
「え!? だ、だって中入りづらいし……」
「ほーら、そういうとこ。そういうのが非モテだってんだよ。玲くんが喜んでいるんだったら最後まで付き合ってやりなよ。これが最後かも知れないんでしょ?」
そう言われてどきりとした。
確かに、今日、俺は玲の告白を断ろうとしている。
もし、俺が断ったら玲も俺と一緒にこれから過ごすのも辛いと思う。
だからこうしてどこかに出掛けることもないだろう……。
そう考えるとなんだかとても心苦しい気がしてきた。
俺はごくりと息を飲むと、決心した。
「分った。付き合ってくる」
「お、やる気出たね~。いってらっしゃーい」
ひらひらと手を振って見送られた俺。
よし、玲に思い出を作ってやるんだ!
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