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「………」
「先輩?」
「なあ玲。これ、俺がプレゼントしたら嫌か?」
「え?」
玲が素っ頓狂な声を上げる。俺は構わず弁当箱を持ってレジへと向かう。
「せ、先輩! そんな悪いです!」
「良いんだ。俺がプレゼントしたいんだよ」
「先輩……」
レジに向かった俺は弁当箱を店員さんに渡す。
すると店員さんが、
「プレゼントですか?」
言われてちょっと照れてしまったけれど、
「はい。お願いします」
言うと、店員さんはにこやかに笑って、丁寧にラッピングしてくれた。ピンク色の包装紙にリボンをしてくれた。
俺の後ろに玲がいる。
会計するまで俺も異性(、、)への初めてのプレゼントだったからドキドキしていたけど、玲が喜んでくれるならそれが何より嬉しかった。
会計が終わると、俺はそれを玲に渡した。
「玲、良かったら受け取ってくれないか?」
渡す手が震える。それをしっかりと両手で受け止めてくれた。
「はい……本当に、有難うございます。本当に本当に、大切にします」
「うん」
玲はショップの紙袋に入れられた弁当箱をぎゅうっと抱きしめた。
耳まで真っ赤にして、どこか瞳が潤んでいる玲は、素直に可愛かった。
「兄貴―! そろそろ出ようか」
「おう。行こう、玲」
「はいっ!」
俺と玲は呼んでいる妹のところへ一緒に向かった。
並んで歩いている俺たちだったが、玲が俺のシャツの裾をずっと握りしめているのが分っていたけど、俺は何も言わなかった。
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