告白

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 玲はブランコの隣にあるベンチに座った。  俺もそこに一緒に座る。  夕日が落ちてきている。  空が朱と蒼と混じり合い、幻想的な雰囲気が漂っている。  公園の電灯も明かりが点いて、俺たちを照らしていた。  昼間の暑さがまだ残っているが、確実に秋の匂いがしている。  住宅街独特の、各家の夕飯の匂いも混ざってどこかそれが安心する。 色んな人がこの町で生きているんだと感じるからかもしれない。とても温かい安らぎがそこにはある気がした。 そんな中、夕暮れの公園では俺と玲の二人。 近くに座っている中、俺の心臓の音が玲に聞こえてしまわないか心配だし、玲の息遣いが妙にリアルに感じる。 誰かにここまで真摯に向き合うことも、これからの人生、そう多くないと思う。 これで、終わりにしたくない。ただ、そう思う俺は欲張りなのだろうか。  緊張の糸を張り巡らせたとき、玲が口火を切った。 「先輩、今日は本当に有難うございました。すごく楽しかったです」  玲は首だけ俺の方を向いてはにかむ。 「ああ。なんか騒がしかったかもしれないけど」 「いいえ。良い妹さんですね」 「そうか? 口が悪いし喧嘩っぱやいし、可愛げがないけどな」  俺が苦笑すると、玲が今度は神妙な表情で、 「あの。先輩は僕のこと、気持ちが悪いって思いますか?」 「え?」 「すみません、変なこと言って。でも、気付いていますよね、僕のこと」  玲の言ったその言葉の意味はきっと、玲が抱えている問題のことだ。  俺はかぶりを振って、 「全然気持ち悪くなんかない。玲は好きでそうなったんじゃないだろう?」  これは千鶴が言った言葉を借りた。  玲はそれを聞いて、どこかほっとした様子で、 「はい。良かったです。先輩なら分ってくれるって、どこかで期待していました」 「うん。俺も最近分るようになったんだけどな」  ただただ苦笑い。 「僕、先輩に出会えて良かったです。学校でも家でも、僕が僕らしくいられる場所って無くて。でも、今日それが自然に出せて、本当に楽しかったんです」
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