56人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
次の日の朝、今日も妹と千鶴と登校している。
今日は乃蒼ちゃんとは登校しないのにも関わらず、俺の昨日の話題で妹は何故か機嫌が良かった。
「で、はじめちゃんはその玲くんとお友達になったってわけなんだね~」
俺が話す前に、妹が千鶴に会うなり俺と玲のことを事細かに説明していた。
――キス以外は。
「そうなんだよ、千鶴ちゃん。昨日、帰ってくるなりなんか心ここに非ずって感じで、ぼーっとしているからさ。何かあれからあったのかって訊いたら友達になったって言うんだよ。私的にはもうちょっと色っぽいことがあったんじゃないかなーと思っているんだけど」
「はあ!? んなもんあるかよ! 馬鹿言ってんじゃねえ!」
「ほら、千鶴ちゃん。怪しくない?」
「ホントだ。はじめちゃん。男らしくないんだよ、そういうはっきりしないのは」
「だから何にもないっつーの!」
「ぶう。はじめちゃんが先に大人の階段昇っちゃったんだよ……お姉さん寂しいんだよ」
「いつから姉になったんだよ」
言いながら、ぶうたれる千鶴たちと学校に着いた。
確かに、色っぽいというか、なんというか、ほっぺにちゅーだけども、俺にとっては、人生初のキスだ。
しかも、俺のことを好きでいてくれる人がしてくれたもの……。
正直、一晩忘れられないくらい記憶に刻まれてしまっていた。
……どうして玲の身体は女じゃないのだろうな……。これほど、辛い気持ちもなかなかないと思うぞ……。
簡単に玲を受け入れられない自分がもどかしい。
妹と千鶴は俺のことをからかっているが、俺自身の中では相当でかい出来事であることは間違いない。
そんなもやもやした気持ちの中、学校に着いてしまった。
校門を潜ると誰かを見つけたようで妹が叫んだ。
「あ! 玲くんだ! おはよー! 玲くん!」
「あ! いさみさん! 先輩も! おはようございます!」
最初のコメントを投稿しよう!