告白

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 下足場までの校庭を先行く玲の姿が見えた。  玲は元気よく、俺たちに挨拶をするとこちらに走ってきた。 「先輩! おはようございます!」 「ああ、おはよう」  少しドキドキしながらも玲の顔を見ると、少し目が腫れていた。きっと、昨晩泣いていたんじゃないだろうか。  友達になってこれからこうして俺と会えるにしろ、その判断を玲が下すのは辛かったと思う。  なんだかこうして一生懸命明るく努める健気さに俺は心が痛かった。  玲のために今の俺に何が出来るかわからないが、玲の昨日の言葉を鑑みるに、家でも学校でも自分がGIDだとバレないように過ごしているのだろうから、俺の前でだけでも素のままの玲でいられるようにしてやりたい。   それしか、俺にはできないけど、俺にしかしてやれないことでもある。  どうしたら玲が自然体で居られる場所を作ってやれるかは、玲を玲として接することだとこの間のデートでも分ったから。  やっぱり、俺はこんなにも真っ直ぐで一生懸命な玲を独りにしたくないんだ。 「どうしました? 先輩?」  小首を傾げて尋ねてくる玲。途端、昨日のキスが蘇ってくる。  どきんと跳ね上がる心臓を懸命に抑えながら、 「あ、いやっ。なんでもないよ!」  俺は玲の肩を叩く。  玲はそれを嬉しそうに微笑んでいた。  そんな時、俺の視野の遠くに乃蒼ちゃんを見付けた。 「おい、いさみ。あれ乃蒼ちゃんじゃないか?」 「え?」  言って、俺が校庭の脇にある木の方を指さす。  ただ、乃蒼ちゃんは一人じゃなく、男子生徒と一緒だった。乃蒼ちゃんはその男子生徒と向き合って、何かを話していた。見る限り、楽しそうな雰囲気ではあった。 「………」  妹の方を見る。すると妹はそれを睨んで歯噛みしている。鬼気迫る妹の様子に俺はしまった、と思った。すると、 「ちょっと私、乃蒼のとこ行ってくる」  言って俺たちから離れていく妹。なんだか、まずいと思った俺は、 「ちょっと待てよ! 別に今行く必要ないんじゃないか?」
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