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授業が終わり、放課後になった。
今日のスケジュールは朝のことが気になって全然頭に入ってこなかった。
ペンと消しゴムをいじっているだけで、ふとすれば妹のことが浮かんで消えなかった。
俺にとっては、妹が楽しく過ごしていることでほっとしていたのに、あんな感情的な妹を見てはただただ心配になるだけだった。
乃蒼ちゃんと何かあったのだろうから、あれから妹が一日をどう過ごしたかが気になった。
クラスメイトにも元気がないと心配された俺だったが、帰り支度をしていた最中、千鶴が俺の教室に迎えに来たから、一緒に妹の教室へ迎えに行くことにした。
「あ、いたよ、いさみちゃん」
「お、良かった。おーい、いさみー」
教室の中を覗くと、自分の机に突っ伏している妹の姿が見受けられた。
「あ、兄貴に千鶴ちゃん……」
俺たちに気付いた妹は首だけ俺たちの方に向ける。
「おーい、大丈夫か? 帰るぞ」
「うん。今行く」
言って妹が椅子から立つ。
スクールバッグを持って俺たちの方へ来た妹だったが、どこかいつもの覇気が無い。
やっぱり、あれから何かあったんだろうな……。
心配して声を掛ける。
「大丈夫か? いさみ」
「んー。大丈夫だよ。早く帰ろ」
「あ、ああ。無理してないなら良いけど」
「………」
妹はそれ以上口を開かなかった。
千鶴も様子を気にしてか、どこか落ち着かないでいた。
何があったかは、詳しくわからないが、無理に問いただすのも違う気がする。
俺に出来ることがあるならしてやりたいが、今の俺には一緒に帰るくらいしか出来なかった。
すると元気の無い妹を労わってか千鶴が重たい空気を破ってくれた。
「ねえ、いさみちゃん! 帰りにマック寄ろう! 期間限定のシェークがあるらしいんだけど」
「ん。じゃあ行く」
「それにはじめちゃんの奢りだからサイドメニューも付けていいよ!」
「はあ!? 勝手に俺の財布を遣うなよな!」
「いいじゃん別に。はじめちゃん、漫画くらいしかお金遣わないでしょ~。それに昨日の玲くんとのこと、私は諦めたつもりはないんだよ」
「うぐ。だからそっちも何もなかったつーの!」
言いながら俺たちは廊下を歩き、下足場に向かっていた。
俺の金を犠牲にしてシェークを召喚しようとしている千鶴の言葉に反し、妹は全く暗い顔をしていた。
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