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次の日、儚い期待は裏切られた。
妹が一緒に登校してはくれなかった。
「はー……」
「元気ないね、はじめちゃん。昨日はいさみちゃんとお話出来たの?」
「出来てない。てかむしろ口も聞いてない」
「そうなんだね。相談して欲しいよね」
「うん。そうなんだけどなぁ……どうしてアイツはいつも独りでなんでもやろうとするんだろうな」
「うーん。それはあれかなぁ。やっぱり自分の悩んできた事が大きいんじゃないかな。誰かに言える環境でも無かったわけだから。自分でなんとか答えを出さないとと思っているんじゃないかな」
「……やっぱりそういうことなんかな……」
「だからここは、お兄ちゃんが頑張らないとだよ」
優しく力強く微笑んでくれる千鶴。それを見てとても励まされる。
「そうだよな。うん。そうする。って、ケータイ鳴っているな」
千鶴と妹のことを話しながら歩いていると、ポケットに入っていたスマートフォンのメール着信が鳴った。
その送信先はなんと、玲からだった。
内容は、
『おはようございます、先輩、今日のお昼、一緒にお弁当しませんか? 屋上で待っています』
「もしかしていさみちゃんから?」
「あ、いや。玲から」
「ふーん。あっそう。良かったね、はじめちゃん。モテモテで良かったんだよ!」
「なんだよ、なんでそんなに膨れているんだよお前」
「なんでもないんだよ! お姉さんは怒ってなんかいないんだよ! 秘密主義のはじめちゃんなんかに怒ってなんかいないんだよ!」
プリプリ怒って先を行く千鶴を追いかける。
「おいー。待てよ、千鶴―!」
これはこれで、千鶴の可愛いところなんだが、本気で玲と内密なことをしたのか疑ってかかってやがる。
まぁ、確かにほっぺにチューはされたけれども。
そんなこと千鶴に言ったらどうなるのやら。
とりあえず玲の誘いには乗っておくとしよう。
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