亀裂

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「本当に先輩は優しいです」 「ん? 何か言ったか?」 「いえ、なんでもっ」  玲は嬉しそうに顔を綻ばした。  俺はなんだか救われた気がした。 玲が俺とこのままで良いって言ってくれたけど、俺はこんな玲に頼ってばかりで、玲のためにも何か自分が出来ることを懸命にしたいと切に思う。  玲が玲でいられる居場所になれるように。  俺は男だ。本当に強くならないとな。  そう心に誓った。 「先輩、ほっぺにおべんと付けていますよ」 「え?」  どうやら俺の口元にご飯が付いていたらしい。 俺がそれを取ろうとすると玲が指でそれを取って、自分の口に運んだ。 「あは。本当に先輩って可愛い」  瞬間、顔が真っ赤になる。 こいつ……小悪魔だっ!  俺は耳まで真っ赤になっていたと思う。照れてしまって、 「俺は子どもじゃないんだからな!」 「えへ。知っています。僕の好きな人です」 「はいはい」  また俺は照れてしまい、一気に弁当をかきこんだ。  それを見ている玲はなんだか満足げだった。 「そうだ。玲。今日、いさみを帰りに迎えに行こうと思うんだが、一緒に着いて来てはくれないか?」 「はい、構いませんよ。早速先輩の力になれるんですね。ふふ、嬉しいな」  玲は手を口元に持っていき、柔らかく微笑む。 「うん。頼んだ」 「それに先輩と一緒に帰れるんだなぁ。すっごく嬉しいです」  そうやって喜ぶお前は可愛いよ……ほんと、俺、今のままでいられるのだろうか。自分が揺らいでしまいそうだ。  俺たちは少し成長出来た有意義な甘い昼食を終わらせた。
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