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屋上へ着いた俺たち。
俺はどうも興奮気味で、イライラして動悸もしていた。
それを落ち着けるように、深呼吸をする。
乃蒼ちゃんはきっと俺がこれから言うことが分っているのか、今にも泣きだしそうな顔をして、小さくなっている。
そんな顔されてもさ……遅いんだよ、乃蒼ちゃん。
「あのさ。多分俺が何を言いたいか分っていると思うけど」
「……はい」
「なあ。なんで妹を裏切ったんだよ?」
「別に裏切ったわけじゃ!」
「いや、裏切っているだろ? 別に他の男と付き合うなって言っているんじゃないんだ。なんで、それを一言も妹に相談せずに急にあんな形で別れを告げたんだよ」
「……だって、もし話してたらいっちゃん別れてくれないと思って……」
「は? なんでそう思うんだよ」
「……な、なんとなく……」
なんだか曖昧な答え方をする乃蒼ちゃんの言葉に更に腹が立ち、大きな声をつい上げてしまった。
「なんだよ! 相談してもいないのにそんな風に思うなよ! そういうのが不誠実って云うって知っているか!?」
「だ、だって! 言って怒られたら……」
「怒られたら嫌だって言うのか!? そりゃ誰だって他の奴と付き合うって言ったら怒るだろうよ! なんだよ、妹のことは遊びだったのか!?」
「違います!」
乃蒼ちゃんが今度は大きな声を出した。
俺はそれを聞いて少し面を喰らった。
遊びだと言って、そうだと言われると思ったからだ。
だってそうだろ? こんなに簡単に妹を捨てられたんだぞ? 普通、遊びだったと思うじゃないか。
「だったらなんで妹を捨てたんだよ」
言うと、乃蒼ちゃんは顔を歪めて、
「私、確かにいっちゃんのことが好きでした。だけど、いっちゃんは女の子だし、彼女がいるとか人に言えないし、いっちゃんはああいう性格だからどんなところでもお構いなしにキスとかするし、イチャイチャしてくるし……私までそういう目で見られるのが嫌で……私、普通でいたいって思ったんです。女の子と付き合っているなんて恥ずかしくて誰にも言えません」
乃蒼ちゃんの独白を聞いて思った。
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