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乃蒼ちゃんは勝手だ。そういうことが嫌ならちゃんと言えば良かったんだ。
なのに、きっと付き合い当初からそういうことをしていて、気持ちが盛り上がっているときだけ妹とイチャイチャしたりして、後から誰にも言えないから妹は嫌だなんて……。
妹が可哀想過ぎるじゃないかよ……。
きっと乃蒼ちゃんは妹がGIDだってことも知っているのに。
「妹が性同一性障害だって知っているよな?」
「……はい」
「あいつの心は男なんだぞ? それでもダメなのかよ?」
「……外見が女の子なのは変わりませんから……」
乃蒼ちゃんは言いにくそうだったがそう言った。
それを聞いてなんだかもう、乃蒼ちゃんには期待したくなくなってきてしまった。
「乃蒼ちゃんは妹のこと、好きじゃなかったんだな」
「いえ! 好きでした!」
「いや、絶対に違う。本当に好きだったら相手の気持ち、考えるはずだ。キスだって乃蒼ちゃんもOKしていたんだろ? それにあいつの身体が女だってことは最初から百も承知のはずだ。それで急に妹と付き合っているのが恥ずかしいだなんて、そんなの身勝手過ぎじゃないのか」
「そんな……だって、本当のことじゃないですか! 彼女がいるって友達や親に知られたら……私、そんなの恥ずかしくて死んじゃいます!」
「っ!」
それを聞いてなんだか期待していないのにも関わらず、イラだってしまって、乃蒼ちゃんの手に俺の包帯の手を握らせた。
「これ! 妹が今日、自分の身体が女で嫌だって自分の身体を傷付けようとしたんだ。それを阻止した時の手の怪我だ。これくらい、妹は悩んだんだ! 確かに身体が同性で付き合っていると周りの目を気にするかもしれない。だけど、本当に好きだったら、別に周りなんて関係ないだろう? 同性のカップルなんて山ほどいる! ただな!」
俺は声を更に張り上げる。
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