ピリオドとスタート

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 乃蒼ちゃんに謝罪を求めてから、俺は午後の授業もサボって家に帰った。  俺の勝手で乃蒼ちゃんを問いただすようなことをしたが、妹からしてみたら迷惑だったんじゃないかと、後から思ってしまった。 「でも、乃蒼ちゃんは勝手だよ、本当……」  嘆息しながら帰宅した。 「いさみ、大丈夫かな……」  俺は妹の様子が気になったから妹の部屋に行った。 「いさみ? 起きているか?」  言うと、中から、 『兄貴? もう帰ってきたのか?』  返事があったので、俺はドアを開けて中に入る。 「おう。元気そうだな」 「うん。なんとか落ち着いた。ごめん、兄貴……手、大丈夫?」 「ああ、大丈夫だ。それより、乃蒼ちゃんから連絡あったか?」 「分らない。ケータイ、電源切ってあるから」 「そっか」  携帯の電源まで落としているなんて……相当辛かったんだろうな。 外界をシャットダウンしたいほど。  俺はベッドに座る。隣に妹も並んでいる。 「………」  少し沈黙が流れる。  目を腫らした妹の顔を見ると、胸が締め付けられる。  妹が自暴自棄になるほど、恋をしていた。  未だにきっと乃蒼ちゃんのことが好きだろう。  玲もそうだが、妹たちGIDの人たちは俺たちストレートの人間が普通に出来る恋愛にも障害が発生してしまう。  なかなか、カミングアウトだってしにくい世の中。  それを理解出来る人たちの少なさ。  マイノリティっていうのは、少数派だって意味と、それだけの理解の少なさを意味すると俺は思う。  それでも人なんだ。  心があって、人一倍色んなことに敏感で、一生懸命、大概の人が独りで抱えて、独りで乗り越えていっている。  それが普通の人たちよりもGIDの人たちは大変で、それでもそれと向き合って懸命に生きている。  そんな人たちに理解がないなんて、そんな大多数の人間なんて、ちっぽけだ。  ある人が言っていた。  難が無い人生は無難な人生。難が有る人生は有り難い人生だと。  そう思う。  だからきっと妹も救われる日がくると俺は思う。
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