56人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
「おい! 何してんだよ! 危ないからやめろよ!」
切った髪の毛がハラハラと風に舞い散る。
俺が止めるのも空しく、ザクザクと綺麗な艶のある髪にはさみを入れていく妹。
外見のことを褒められて髪を長くしていた妹の髪がどんどん短くなる。
俺はそれを最初は心配して見ていたが、止めた。
これは妹の断髪式なんだ。
妹が、決心したんだ。恋を終わらせると。
妹がある程度髪の長さを整えて切り終わると、こちらを振り向き、
「失恋記念。断髪式終了!」
にしし、と笑い、Vサインをする妹。
「兄貴、終わっちゃったよ……あはは……」
言って、涙を一筋流した。
妹は前に言っていた。
思い出作りをしていると。
玲も言っていたが、妹たちにとって周りに脅威になる異性が溢れている。
だから妹もいつかこういう日が来るんじゃないかって、あの時既に覚悟をしていたのかもしれない。
それでも真摯に必死に自分に向き合う妹。
妹はとても可愛くて、潔くて、カッコよくて、その涙はとても綺麗だった。
最初のコメントを投稿しよう!