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次の日、髪の短くなった妹を連れ、学校に向かう。
「おはよ~! はじめちゃん、いさみちゃん! って、あー! いさみちゃん髪切ったの?」
千鶴がとてとて走って来て言う。
妹は頭に手を当てて、にしし、と笑うと、
「うん! 切ったんだよー! ショートの私、カッコいいでしょ?」
「うん! カッコいい! 短くても似合うなんてやっぱりいさみちゃんはイケメンだね!」
「でしょ! ほら、兄貴。私モテモテなんですけどー。千鶴ちゃん、私と付き合ってみる?」
「え! えーどーしよ~♪」
「おま、千鶴にまで何言ってんだよ!」
「あ、兄貴、今嫉妬した?」
「していませーん」
「なんで、棒読みなんだよ」
「うるせ!」
言って俺は笑う。
妹が昨日の今日でこんなにも元気になってくれた。……空元気かもしれないが。
それでも俺たちの前でこんなにも明るく振る舞ってくれる妹が嬉しい。
きっとずっと昨日の晩は辛かったろうと思うのに。
「ていうか、はじめちゃんどうしたのその手?」
千鶴が俺の包帯で巻かれた手を心配そうに言う。
俺はぎくりとしたが、平静を努めて、
「捻ったんだよ」
「ふーん。はじめちゃんそんなにか弱かったっけー。でも、大丈夫?」
「うん、大丈夫だ」
言って俺は笑う。妹にも気を遣わせないように。
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